墓石(ぼせき、はかいし)とは、墓のしるしに建てる石のことで、墓碑ともいい、墓石を指して墓(お墓)といいます。ここには五輪塔、宝篋印塔、宝塔、多宝塔、層塔、板碑も含まれます。
日本では、平安時代に仏教の伝来に伴い石工の技術も渡来人によってもたらされ、供養塔や墓石としての五輪塔、宝篋印塔、宝塔、多宝塔、層塔などが支配階級の間で出現しました。その後、鎌倉時代~室町時代にかけて、禅宗の到来とともに位牌と戒名が中国から伝わります。その影響からか、位牌型の板碑や今日の墓石に近い角柱型のものもつくられるようになりました。
江戸時代になると檀家制度が確立し、人々に先祖に対する供養や葬儀、墓など仏事が生活の中に定着したことにより、庶民まで墓石を建立するようになりました。墓石に家紋を入れるようになったのはその頃からです。はじめ墓石は個人や夫婦の為のものでしたが、明治中期以降は家制度の確立により、家単位で建立されるようになります。その為、正面には以前は故人の戒名(法名)を彫っていたものから、「○○家先祖代々之墓」などのような形に変わっていきました。
その他、正面には宗派の梵字や名号、「倶会一処」などが刻まれ、側面には建之日・建之者・故人の命日・俗名などが刻まれます。(文字の所に墨を入れる場合もあります。墨色は、石の色や地域により白・黒・金・銀などです。建て替え者が存命の場合は文字に朱色を入れる場合もあります。)
第二次世界大戦後には、霊園の洋型の墓石が登場。現在ではデザイン墓石なども多様化しています。
また、現状では彫り入れる文字も「代々墓」、「先祖代々墓」などから、その宗派のお題目を入れることが多くなりました。(例:南無阿弥陀仏・南無妙法蓮華経・南無釈迦尼仏・倶会一処など)
石材店として、お客様には
「墓石に使う石は硬度の高い(硬い)石を使う方が良い」
「吸水率の低い石を使う方が良い」
といった説明をしますが、この場合は墓石の吸水率と硬度を同義語として使っています。
(鉱物の相対的な硬さを表すのに用いられる指標としては「モース硬度計」があります。これは鉱物の硬さの相対尺度であり、最も軟らかい滑石が1、最も硬いダイヤモンドは10とした10段階で表示します。(*御影石(花崗岩)は硬度6))
実際の吸水率というのは、ある材料(ここでは石材)を水に浸してしっかりと水を吸わせ、吸水量を乾燥物一定量に対する比率で表した数値とされています。具体的には、10×10×20(cm)の切削された直方体の石を水に48時間浸し、浸水前の重量と浸水後の重量の差を浸水前の重量で割って求めます。(*JISの規格では、石は3本用意し、その平均値を出すとのこと。)
このように、実際の硬度と吸水率は異なったものですが、石材店では切削、磨き、文字彫り等の作業工程で、その石が花崗岩の中で硬い石か軟らかい石かという判断ができます。そして、硬い石ほど吸水率が低い、という相互関係は、加工の際の手ごたえ、建立後の墓石がどのように風化していくものかという状況を多く見比べてきた先人達の経験に基づく知識であり、実は数値と同じほど信頼のおけるものではないかと思っています。